2012年1月 9日 (月)

平成23年12月27日判決についての自己評釈

制限利息を超える高利の貸金業者が主債務者と保証人を相手に残債務を訴求した。しかし、被告らは既に和解が成立していたと反論。さらに、譲受した過払い債権で相殺と主張したが、裁判所の判断は・・・。「23.12.27.pdf」

この判決については、被告としては勝訴したものの、内容的に疑問が残る事が多々あるので自己評釈をしたいと思います。

 事案の概略は、貸金業者と債務者との間には、制限利息に引き直すと、9000円程の残債務が存在した。この債務者及び保証人の代理人となった司法書士と貸金業者との間で9000円を支払うことについての和解契約が成立した。

 一方、債務者の母親には、この貸金業者に対し確定判決をとった過払金債権があった。
しかし、この貸金業者は過払金を支払うこともなく、口座差押えも功を奏さなかったので、上記債務者の和解金も支払わずに時が経過した。

 それから2年ほど後、この貸金業者から突然債務者及び保証人を相手に、期限の利益を喪失した損害金利率による元金22万円及び2年間の遅延損害金の貸金返還訴訟が提起された。訴状は判決文の中に取り込まれているので参照していただきたい。

判決は、貸金業者が請求する貸金契約に基づく返還請求権と、和解契約により生じた請求権は別個の訴訟物であり、和解契約による清算条項の発効により貸金契約に基づく返還請求権は既に消滅していると解釈することができるであろう。
 しかし、それを理由として請求を棄却しただけでは、当事者の紛争を最終的に解決したことにはならない。当事者間には、いぜんとして和解契約不履行による債務が存続しており、それにいかほどの利息が付くのか、また、母親から娘に対してなされた過払債権の譲渡は有効であるのか、さらにはそれらの相殺は有効なのか、有効だとするとどのように充当されるのか、等々当事者間で争われた争点に関して一切判断がなされていないのである。

私は、はっきり言って裁判官は判断から逃げたのだと思う。そう思うのには訳がある。それは、口頭弁論第1回期日において被告らの答弁書で主張された和解契約成立の事実については争いがなく、そうであれば、そこで審理終結したとしてもこのような判決はなしえたはずである。しかし、裁判官は被告らに自働債権の内容について釈明を求め、過払債権の証拠書類を提出させた上、相殺の方法についての主張について明らかにさせるため、さらに期日を重ねさせたのである。そこまでさせて、この判決では納得がいかない。
しかし、被告ら勝訴では控訴の利益もなく、このブログで憤りを発散して沈めるしかない。
 

2011年4月28日 (木)

悪意の受益者についての立証責任でお困りの方へ

  裁判官から受益者の悪意についての立証責任は原告にあると言われたことはありませんか?
 不当利得返還訴訟の場合,受益者の悪意についての立証責任は通常は原告にあります。しかし,利息制限法による超過利息を受益した者の悪意については,最高裁判所平成19年7月13日第二小法廷判決において「貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有し,かつ,そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情」を具体的に主張立証しない限り,被告に悪意の受益者であるとの推定が働くのですから,当該推定を争う被告に立証責任があることになります。
  一方,原告は,被告提出の同法17条及び同18条書面が,その要件を満たさない事に対し,貸金業法43条1項の適用があるとの認識に欠けていることの間接事実,又は,そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情も存在しないことの反証をすれば足りるのです。
  平成19年判決は判例法です。したがって,「法律上の事実推定」が働きます。「法律上の事実推定」とは,甲事実があるときは,乙事実があると法律で規定を設けている場合です。
いかなる事実推定かというと,被告に制限超過利息の受領があり貸金業法17条及び同18条書面がその要件を満たさない事実(甲事実)があるときは,悪意の受益者であるという事実です。推定ですから甲事実が認められても,乙事実がないこともありえますが,乙事実が存在しないこと(すなわち,「貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有し,かつ,そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情」)についての証明は被告による本証でなければなりません。一方,原告は,反証(真偽不明にすること)で足りることになります。
  以上の立証責任については,平成21年判決においても変わりません。もし変更するのであれば,大法廷で判断されなければならないからです。当該判決は,「期限の利益喪失特約下の支払の受領というだけでは悪意の受益者とは認められないのであるから,制限超過部分の支払について,それ以外の同項の適用要件の充足の有無,充足しない適用要件がある場合は,その適用要件との関係で上告人が悪意の受益者であると推定されるか否か等について検討しなければ,上告人が悪意の受益者であるか否かの判断ができないものというべきである。」 と判示しています。したがって,個々の借入返済について,貸金業法43条1項を充足しない適用要件がある場合の,その適用要件との関係で被告が悪意の受益者であるか否かの判断について,特段の事情を具体的に主張立証しなければなりません。
具体的な立証とは高度の蓋然性をもって確かといえる程度の本証であるとされています。サンプル,業務体制の構築,下級審判例,学説等は直接証拠ではありません。立証が不十分な被告は悪意の受益者と推定されます。被告がなすべき立証方法は,具体的な立証でなければならず,それは高度の蓋然性をもって確かといえる程度の本証であることを要し,当時の下級審判例,学説等では足りません。当時の下級審判例,学説等がそれを充足しないのは,それらは,いつでも付け足せるからです。すなわち,「貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有し,かつ,そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情」は,過払金が発生した当時そのような認識に至った事が必要であるところ,下級審判例,学説等は.返還訴訟が提起された後からでも探し出してくることが出来るのであるから,過払金が発生した当時当該下級審判例,学説等によって被告の認識が形成されたことにはならないからです。

2011年1月30日 (日)

司法書士の本人確認義務

 先日,土地取引決済があった時のことです。
知人が中古住宅を購入するということでした。 

 中に仲介業者が入っていたようですが売買金額で途中すったもんだし,結局最初の金額より50万円上乗せして買わされたようで,不信感を拭いきれない知人が,仲介業者おかかえの司法書士を蹴って,私を指名してくれての取引でした。 

 建物は壊して建替するとのことでしたので,土地のみ移転登記すればよい事などをアドバイスしました。
売主は高齢なので息子が立ち会うというので,事前に連絡を取ることにしました。

 その際,所有者本人の登記上の住所と現実の住所が異なっているので,住所変更登記手続きをする必要がある事,また変更を証する書面等が必要である旨伝えました。

 取引当日,売主側に住所変更の書類を求めると,すでに,住所変更登記は仲介業者の方で終わらせたので持ってこなかったというのです。同時にお願いしていたお父さんの本人確認書面も持参しなかったので,所有者であるお父さんの本人確認はしたのですかと尋ねると,そんなことはしなくとも住所変更登記は完了したというのです。
 私はいまだに本人確認もせずに登記手続きをしている司法書士が存在していることに愕然としました。

 ブログをごらんの一般の方は,司法書士の本人確認義務を知らない方もおありでしょうが,本人確認を怠ると,後日紛争が起きた場合に,土地の権利が保証されない場合もあるのです。さらに,司法書士には確認するだけでははなく,確認した書類の10年間の保管義務もあります。
 私自身は,事前に本人と連絡を取っていたので,取引を中止にはしませんでしたが,本来なら延期にしても良いケースでした。

2011年1月26日 (水)

伝家の宝刀

本日,プロミス切替案件の裁判があった。

この裁判では,

①主位的主張に「法人格否認の法理」

②予備的主張1として,債務引受ないし契約上の地位の譲渡

③予備的主張2として,切替契約を詐欺による意思表示の取り消し

であった。

裁判官は,このうちどれが一番有力と思うかと私に聞いてきた。
私は,主位的主張に決まっているだろうと答えた。
裁判官は,「法人格否認の法理」は伝家の宝刀だと私に言った。
そして,契約上の地位の譲渡一本にしないかと言うのである。
「伝家の宝刀」の意味は,最後の切り札。滅多に抜かない刀。
他にに勝てる刀があるだろう?と言う意味なのだろうか。

私としては,裁判に勝てれば何でもいいのであるが,要するに「法人格否認の法理」についての判決文を書くのがいやなのであろう。と思った。

だからといって,主張をひっこめろとか,順番を変えろとか,言えるのだろうか?

言うことを聞くといい判決がもらえるのだろうか。

裁判所とは不思議なところだ。

2011年1月21日 (金)

法人格否認の法理

             法人格否認の法理

私が初めて依頼人の「プロミスの切替案件」に係わったのが平成21年の4月頃だった。今はもう平成23年だから足かけ2年になる。プロミスの履歴開示にクラヴィスからの借換による金銭取引が含まれているとの説明があったのである。

   当時,プロミスとクラヴィス(旧社名リッチ,ぷらっと,クオークローン,タンポート)との関係について詳しい情報を持ち合わせていなかった私は個別に事件処理をすることにした。要するに,クラヴィスについては過払金返還を請求し,プロミスについては残金ありとして分割返済の方針を立てた。そして,クラヴィスについては過払返還訴訟を平成21年6月に提起し,プロミスについては過払金で返済できるまで放置することにした。今思えば,プロミスについて現在まで放置したことは正解だったと思う。

  また,当時プロミスの切替案件を一連で処理しようとしても,情報量の不足から困難を極めたに違いなく,多くの同職や弁護士すら対応できなかったことが,プロミス側の提供する判決集から推測できる。
クラヴィスとの過払返還訴訟はあっさりと決まった。最初から負けるつもりであったのかもしれない。しかし,クラヴィスは過払金を支払わなかったのである。

 現在,プロミス側は強気である。背景には,この手の切替案件が,切替案件として気づかれずに大部分が処理されたであろうことも一因であるに違いないが,係争中の案件についてもかなりの割合でプロミス側有利に展開しているようである。同職からの情報でも敗訴したとの連絡があったし,おおよそ5割程度の確率で推移しているようである。
 これらの判例を分析してみると,争点としては,債務引受ないしは契約上の地位の譲渡があったかどうかのようである。そして,その核心とは,受益の意思表示の方法と時期に尽きるようである。

 法学部出身でもない私がいうのも僭越ではあるが,集めた情報から分析するとプロミスとクラヴィスとの関係については,全く異なる別法人とは思えないのである。そこで脳裏に浮かんだのが法人格否認の法理である。法人格否認の法理とは,岡口基一著(ぎょうせい出版)要件事実マニュアル上80頁では「会社について,法人格という形式を貫くことが社会的正義や公平に反する場合に,特定の事案に限って会社の独立性を否認し,会社とその背後にある実質的支配者とを同一視するための法理である。」と説明されている。形式上法人として存在しているが,特の事案に限って実質的には個人の行為ととらえようとするものである。
本件で言うと,クラヴィスが形式上の法人であり,プロミスが背後者ではないかと考えたのである。

  形式上の法人と主張するからには,その設立の背景から検討しなければならない。
1 一般的に,利息制限法の制限利息を超えて貸金業を営んでいても過払金が問題とされなかった時代には,いかに多くの顧客をとりこむ為に窓口を増やすかが消費者金融間における利益獲得競争の勝負の鍵であったから,いくつもの子会社を設立し,多彩な宣伝をし,同一顧客とでも複数の包括的金銭消費貸借契約を締結したほうが最小のリスクで最大限の利益が獲得できた。問題は,このような子会社とは名ばかりの実質同一法人に等しい事である。
2 そもそも,営利を目的とする企業には、最小の投資とリスクで最高の収益をあげようとする目標が存在している。貸金業を営む場合に,最も効率よく右目的を達成できる方法は,10万円を超え100万円を超えない範囲の金額を細かく何口も貸し付けるのが最も効率的である。貸付額が10万円では,利率は高くなるが貸付金額が少額な為収益が上がらない。また100万円を超えると利率は低くなるうえに,返済不能な場合のリスクも多くなるからである。
3 しかし,単なる分割返済として貸付しても貸付残高が返済により減少してくると,当然受け取る利息も少額になり,収益も上がらないから,借り換えさせて,貸付残高を減少させないようにしなければならない。それを解消したのがいわゆる包括的限度貸付契約である。このようにして,徐々に貸付残高を増額し,月々の約定利息の減少を防ぐ為には「途中借替」が最も効率的に収益を保つ手法であったのである。また,10万円以上100万円以下の残高で推移することも,高利とリスクを考えると最良の方法であった。一方貸付残高が100万円を超えると,制限利息も15%になるので,これを防ぐためには子会社をつくり別口で借りさせることが最良の方法であることを学んだ金融各社は次々と子会社を設立していった。本件クラヴィスも以上のような趣旨でプロミスが設立した子会社である。
4 また,クラヴィスはクオークローン,タンポートなどと,その商号を頻繁に変更してきた。一般的に消費者金融がその商号を変更するのは,一般顧客にとっては別会社であるかのようにみえるので借りやすく,また過去の返済の延などの負い目を払拭してくれるかのような思いを抱かせるからである。一方過払金返還が隆盛し始めた頃からは,返還金の追求を逃れることを目論んだこともその理由の一つである。あたかも犯罪者が名前を変えて逃走するが如きである。しかし,本人がいかにその細胞をクローン化し別人を創り上げ利益のみを吸収し,責任のみを押しつけた後に抹殺しようとしたり,名前をロンダリングして別人のように見せかけたりしようとしても社会から許される筈はなく,法は毅然と判断を下す使命を背負っている。
5 本件プロミスらグループも,商号を変えたり,子会社を設立したりして過払金の返還を逃れようとしても法を司る者はこれを見逃してはならない。それにもかかわらず,消費者金融各社は,債権譲渡などの様々な手法をもちい返還追を逃れようと画策してきた。債権譲受会社は,超過利息の責任はないと主張すればよいし,譲渡会社は無資力と説明して返還を拒めば足りるからである。しかし,現実に債権譲渡があったのであれば,譲渡会社は無資力であるはずがなく,このような偽装行為は通用しない。
6 さて,本題であるプロミスとクラヴィスとの関係であるが,クラヴィス(旧社名タンポート)は被告の100%の子会社である。2009年3月24日付け,子会社の異動,営業貸付債権の売却,並びに店舗の再編に関するお知らせによると,クラヴィスは,顧客に対する貸付金債権を平成19年11月までに被告に譲渡し,その後廃業した上で残存債権の回収を進めてきた。それは,金融業界を取り巻く環境が,貸金業法改正への対応に伴うマーケット規模の縮小や高まりする利息返還請求等により厳しさを増してきたからであると説明している。ここでいう,高止まりする利息返還請求とは,平成18年最高裁判決を受けての事であろうが,特定の顧客の場合,残存債権回収とはならなかったのは,既に過払いの状態であることをクラヴィスが知っていたからであり,いずれ専門家が介入し債務整理手続になれば,過払であれば残存債権の回収が不能であると判断したからである。すなわち,プロミスグループの利益のためには,廃業と決めたクラヴィスから特定の顧客への切り替えを勧誘する必要があった。
7 2007年5月1日付け,コスト構造改革への取り組みと新事業戦略の実施について及び金融事業縮小についてによると,クラヴィスを含めたグループ全体でコスト構造を見直し,収益力確保のため様々な改革を行うとしている。すなわち,グループ全体の利益が最優先であることを自白しており,対局にあるのは消費者の損失である。
  同改革においては,平成19年10月までに以下のような対応を実施するとしている。
  ①貸付の中止と債権の移動
②チャンネル
※クオークローンはプロミスの自動契約機に乗り入れしており,独自の無人 店舗は保有していない。
③従業員
クオークローンの社員については,残留債権の管理回収等を行う一部の社員を残し,プロミスグループ内で適正な配置を行う。
 なお,後述するが本件切り替え手続については,クラヴィスまたはプロミス店頭の双方の窓口で可能であり,同一業務がなされていた。
 また,平成20年度決算短信13によれば,被告の子会社で,役員の被告との兼任は6名で,議決権等の所有割合は被告100%である。
すなわち,経営方針についての意志決定が同じであり,貸金業としての最も重要な自動契約機等のハードについても同一であり,従業員についても同一であれば,別法人とは名ばかりの同一法人と見なされるべきである。すなわち,法人格否認の法理の構成要件の一つである背後者と法人が同一であることは明白である。
 そうすると,本件切り替え行為について,その法律構成を考慮するまでもなく,同一法人の内部的意志決定とみなされるべきである。法人格否認の法理に基づき強いて法律構成を主張すれば,このような切り替え行為自体社会的に許される行為ではなく民法1条3項権利の濫用(多数説)ないしは2項(最判昭和8年10月26日民集27巻9号1240頁)である。本件切り替え行為に関してはクラヴィスの背後者たるプロミスが実質的に同一である。また,他の要件である不正の目的とは過払金逃れである。本件クラヴィスの法人格が否認されれば,プロミスが全責任を負うべきであると考えるのですがいかがでしょうか。

2011年1月 8日 (土)

登記を依頼する委任状は、法務局に対する「報告証書」にすぎない

  みなさんこんにちは。前回のつづきです。

前回の,キーポイントは「文書の実質的証拠力が備わっていたとしも,文書の形式的証拠力が問題となるのか。」でした。

 まず,文書に実質的証拠力が認められる場合とは,その文章の内容が信用できる場合ですから、形式的証拠力すなわち誰が書いたかを問題にしても意味がありません。文書の内容に争いがなければ、誰が書いたかについて争っても、文書の内容が覆ることがないからです。

前回の説例でいえば、依頼人と司法書士の間には委任契約が成立し、登記の代理人であることに争いがないからです。委任契約は要式契約ではありませんので委任状がなくても契約は成立しているのは明らかです。ただ、登記は要式行為ですから委任状の作成を義務づけされているにすぎません。

いいかえると,誰が書いたかについての形式的証拠力が問題となる場合とは、文書にこめられた「作成者の思想」が争点になった場合にだけ当該文書の証拠力を問題とすればよく、文書の成立の真正を争えばよいのです。したがって、「作成者の思想」が争点にならなければ、誰が書いたかを問題とするまでもないことになります。

そうであるにもかかわらず、文書の「偽造」を争う者がいるとすれば、それは他に目的があることになります。
  文書には,それを作成したことにより新たに権利義務が発生する「処分証書」というものと,既に口頭もしくは委任契約書等により,すでに委任契約が成立し,それを報告する意味しかない「報告証書」というものがあります。
 このたびの,改正登記法により新たに登場した「登記原因証明情報」というものがあります。これは,例えば土地の売買契約が成立し,売買契約書を取り交わしていたとしても,登記を申請する場合には「登記原因証明情報」というものを添付しなければなりません。(売買契約は様式行為ではありませんし,たとえ契約書を作成したとしても,登記原因証明情報として利用できるかどうかは別です。)
まさにこの「登記原因証明情報」は,前述の「処分証書」にはあたらず,法務局に対する登記申請のための「報告証書」にすぎず,登記代理人である司法書士に作成権限があります。
 これと同様に,登記を依頼する委任状は、法務局に対する「報告証書」にすぎないのではないかと思うのですが,いかがでしょうか。

      ホームページ
        http://j-taki.a.la9.jp                        

2011年1月 4日 (火)

「私文書偽造」に該当するか

地元の公証人の先生をオブザーバーとして,少数の有志で民事訴訟実務研究会を毎月開催している際に議論になったことがあります。

 たとえば,抵当権の抹消の際に,住所変更が必要であることが判明したとします。

司法書士がその旨を依頼人に説明をし,了解の上,委任状を作成し事務所に常備してある認印を押して登記を完了した。
この場合依頼人は,委任状を自ら作成してもいないし,押印もしていないので「私文書偽造」に該当するか。  

私は,単純に「偽造」と判断してしまうことは,早計と考えます。

 なぜならば,「偽造」とは,文書の作成名義人でない者が,権限がないのに,氏名を冒用して,文書を作成することであります。
 作成名義人とは,本人のことですが,本人でない者でも「権限」があれば「偽造」にはなりません。

さて,この「権限」とは,なんぞやということになりますが,これはすこし後回しにすることにします。

 最初に,刑法上の文書偽造罪の保護法益はというと,当該文書の真正に対する公の信頼でありますが,上記説例は,この保護法益を害しているでしょうか,答えは「ノー」であります。

 依頼人が司法書士に委任した事実は真実であり,委任状の内容が虚偽ではないからです。
 ただ,作成者が本人ではないから,本人が書いたという意味で虚偽だという反論がありそうですが,それは文書自体に本来そなわっている「作成者の思想を表示したもの」というとらえ方ではなく,ただの検証物としてのとらえかたであります。
 いいかえれば,秘書に指示して書かせた文書が本人が書いたものではない。また,脅迫してでも本人に書かせた文書ならば,本人が書いたものであると主張するのと同じことです。

 キーワードは「作成者の思想を表示したもの」かどうかであります。

次に,民事訴訟でいうところの,「文書の形式的確定力」について,考察してみたいと思います。
書証は,文書に記載された作成者の思想を事実認定の資料とするものですが,その文書が挙証者により作成名義人と主張されている者によって真実作成されたかどうかがまず確定される必要があり,これが形式的証拠力の問題であります。それが証明された後に,そこに表現されている作成者の思想がどれだけの証明力をもつかが実質的証拠力の問題であります。

上記の説例では,作成者の思想に問題はないのですから「文書の実質的確定力」は備わっていることになります。問題は,「文書の形式的確定力」であります。

文書の実質的確定力が備わっていたとしも,文書の形式的確定力が問題となるのか。

かりに,委任状が偽造文書と確定した場合に,委任契約が無効となるのか。

さらには,偽造の委任状で登記した住所変更登記も無効となるのか,抹消登記は・・・?

どうでしょうか。?

2011年1月 3日 (月)

私の勉強部屋

本日,ブログを開設しました。